コンタクトレンズの分類によって、点眼薬を着用したまま使えるかどうかを解説します。
この時期になると花粉症の症状を緩和するために点眼薬を使っている方が増えてきます。コンタクトレンズを付けたままでも点眼ができる花粉症の点眼薬は「アレジオン点眼液」が一番有名でしょう。アレジオン点眼液がなぜコンタクトレンズをつけたままでも大丈夫かというと、防腐剤の一種に陽イオン界面活性剤(+に帯電している防腐剤)が入っていないからです。今回はその理屈について詳しく説明したいと思います。
一般に、点眼薬には防腐剤が入っていることが多いです。ベンザルコニウムという防腐剤が広く一般に使われています。トローチと同じように、殺菌効果があります。陽イオン界面活性剤は主にベンザルコニウム、ベンゾドデシニウム、クロルヘキシジンが使われています。その中でも、ベンザルコニウムは高濃度では角膜のタンパク質に悪影響をもたらし、角膜障害に繋がることがあるとされています。
そんなベンザルコニウムは、裸眼で使う分には特に問題視されていないのですが、コンタクトレンズのときだけ、なぜ話題に上がるのかというと、一部のソフトコンタクトレンズに吸着して、角膜とベンザルコニウムが接触する時間が長くなることで、角膜障害に繋がることがあるのです。一部のコンタクトレンズとは、一般的には、「ワンデイ以外のソフトコンタクトレンズ」を指します。ハードコンタクトレンズはベンザルコニウムが吸着しないため、問題なく使用できます。また、ワンデイタイプのソフトコンタクトレンズは1日だけの使用のため、吸着量が少ないため、特に問題ないとされています。なので、一般的に、窓口では、「ワンデイのコンタクトレンズであれば特に問題ないですよ」とお伝えしていることが多いです。
しかし、この話には続きがあります!
なぜソフトコンタクトレンズにベンザルコニウムが吸着するのかというと、ソフトコンタクトレンズはマイナスに帯電しており、ベンザルコニウムはプラスに帯電している陽イオン界面活性剤だからです。吸着するのは電気的な問題だったのです。さらに、ソフトコンタクトレンズは実は、「イオン性」と「非イオン性」の2種類に分類されます。イオン性のコンタクトレンズは材質的にマイナスに帯電しています。非イオン性のコンタクトレンズはほとんど帯電していません。コンタクトレンズの製品HPを見ると、非イオン性であることを明示していることが多いので、見分けること自体は簡単にできます。ソフトコンタクトレンズは含水率とイオン性によって4つに分類されます。グループⅠとグループⅡが非イオン性のソフトコンタクトレンズであり、添付文書か、ソフトコンタクトレンズパッケージに記載されています。
今回の防腐剤のお話は電気的なお話のため、非イオン性のコンタクトレンズ(グループⅠとグループⅡ)だと、ベンザルコニウムが吸着しにくいため、理論上はハードコンタクトレンズと同様に、着用しての点眼も問題ないと考えられます。
また、参天製薬株式会社の医薬品情報室に「ソフトコンタクトレンズを着用して、ベンザルコニウムが入った点眼薬を使ったときの角膜障害の副作用報告は今まであるのか」と問い合わせたところ、「実際にはそのようなデータはなく、理論上考えられるため、現場にご説明しております」とのことでした。確かに、ベンザルコニウムの入った点眼薬をソフトコンタクトレンズ着用したまま使って角膜障害が起きたかどうかを検証したのはウサギでの動物実験くらいしか見つからず、臨床にデータが少なすぎることがずっと気になっていました。
以上のことから、薬局お茶の水ファーマシーでは、ソフトコンタクトレンズを着用しての点眼薬についてお薬の説明をするとき、「ソフトコンタクトレンズの製品情報」をお伺いし、「非イオン性(グループⅠとグループⅡ)」であることがわかった場合、ハードコンタクトレンズやワンデイタイプと同様に着用での点眼は薬学的に問題ないことをお伝え致します。

<この記事を書いた薬剤師です>処方せんが必要なお薬だけではなく、風邪や花粉症といった軽症で使用するお薬の相談・販売も承っております。その他にも、栄養剤、サプリメント、化粧品、洗剤など、ケミカルな相談もなんでも受け付けております。薬局のLINE公式アカウント、お電話、薬局窓口までお気軽にどうぞ。
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<Pharmacy Tips !>
#LDLを70未満に抑えると脳卒中の再発を減少させることができる。
虚血性脳卒中またはアテローム性動脈硬化の証拠を伴うTIAの後、1リットルあたり70 mg未満の目標LDLコレステロール値を有する患者は、1リットルあたり90 mgから110 mgの目標範囲を有する患者よりも、その後の心血管イベントのリスクが低かった。