2019年10月17日に第7回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会の資料が公開されました。

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2019年10月17日に第7回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会の資料が公開されました。 → https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07353.html

2016 年 4 月に公表された、日本の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2016–2020」にもとづいて、ヒト、動物、食品及び環境等から分離される薬剤対性菌に関する統合的なワンヘルス動向調査が厚生労働省のページから読むことができます。この動向調査は AMR の現状を正確に把握し、問題点を抽出し、適切な施策を進める上での重要な戦略と位置づけられています。抗生剤の適正使用における、耐性菌発現状況や、年間使用量、患者、医療従事者、畜産業者の意識調査の結果も公開されています。年次報告書の前半は、各耐性菌の発生状況を菌株別にずらずらと書いてあるので、とても読みにくいですが、後半69ページ目にある意識調査は薬局でも情報発信できる内容だったので、解説していきたいと思います。

患者さんの意識調査

2018年の調査(3192人)において、抗生剤をなんらかの症状で処方された場合、自己判断でその抗生剤を途中でやめたり、自己判断で加減する方が24%ほどいらっしゃるそうです。症状が良くなってきたからと、自己判断で抗生剤の服用を中断してしまうと、その抗生剤に対して耐性菌ができてしまう恐れがあるので、しっかり飲みきって、細菌を退治しきることが大切です。耐性菌ができてしまうと、体力が低下している小児、高齢者の方が感染したときに、通常の抗生剤では対処できず、症状がより重くなってしまうことがあるからです。また、自己判断で抗生剤を加減することは薬学的に効果を発揮できないことがあります。

一定の投与間隔で効果を発揮する「時間依存性」抗生剤(抗菌薬)と、一回の投与で大量に使うことでその効果を発揮する「濃度依存性」抗生剤(抗菌薬)の2種類があることはあまり患者さんには知られていないかもしれません。自己判断で加減すると、本来の効果を発揮できないことがありますので、しっかり用量用法を守って使用してほしいと願います。

また、自宅に抗生剤を保管している方が11.9%ほどいらっしゃるそうです。飲み残した抗生剤で対処してよいかというご相談をいただくこともありますが、かかりつけ医の明確な指示(残薬の再利用等)がない限り、すべて使用しないようにお話させていただいております。というのも、現在の症状と抗生剤が適しているかは薬局ではほぼわからないからです。ちなみに、患者さんの鼻汁を採取して、細菌を染色して実際に調べている薬局さんも存在しますが、医師の確定診断が必要であり、残薬の抗生剤を服用することを薬剤師から指示することはありえません。

そんな状況なので、自宅に個人的に保管している抗生剤を家族や友人にあげて使うことは副作用、飲み合わせ、耐性菌発現の上で非常にリスクがあるため、人にあげる、もらうことはくれぐれもしないようにしてください。

処方医の抗菌薬投与対応

診察室にて、医師に抗菌薬を希望される方もいらっしゃいますが、そのときに医師がどのように対応しているかを上記は示しています。説明して納得されない場合に処方されるケースが多く、過半数はゴネに押されてしまったという結果が出ています。風邪の症状緩和に抗生剤が効くと信じている人が本調査で69.6%いることから、診察時に強く希望されるケースがあるのでしょうか。風邪のほとんどはウイルス性で、ウイルス性と診断された場合は、抗菌薬は全く有効ではないです。医師にウイルス性という説明を聞いた時点で、自分の体に必要のない薬剤を求めていること、副作用、耐性菌発現のリスクを上げていることを思い出して、抗菌剤をおねだりしたりしないようにしましょう。

家畜飼養業者のAMR認知度

薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会では、ヒトだけではなく、動物に対しての抗生剤適正使用に関してもまとめています。皆さんの食卓に並んでいるお肉も多少なりとも抗生剤のお世話になっています。動物用医薬品というカテゴリもあり、ペットショップなどで応急処置的なお薬を入手することもでき、動物病院では抗菌薬の処方も受けることができます。牛、豚、鶏の飼育においても、飼料に抗生剤を混ぜて感染症のコントロールがされています。動物用医薬品の管理は農林水産省の管轄のため、厚生労働省管轄の薬剤耐性アクションプランの認知度は家畜飼養業者では29.4%と、質問項目の中では一番低い数値となっています。

実際には、牛、豚、鶏の大腸菌耐性菌発現(一例としてフルオロキノロン)では、ヒトに比べると高水準でコントロールされている感はあります。動物は自分で抗生剤の自己中断や加減、家族や友達に渡したりしないからでしょうか。ちなみに、家畜に抗生剤が使用されても、休薬期間が設けられており、市場に出回る頃には抗生剤が抜けています。

産業動物臨床獣医師のAMR認知度

産業動物臨床獣医師へのアンケート結果では、薬剤耐性アクションプランへの認知度は家畜飼養業者と同じく、どの項目より低かったのですが、全体的に認知度は高い感じです。上記の図8、ヒトと牛、豚、鶏の耐性率割合からしても、ヒトの耐性菌発現コントロールのほうが難しいことがわかります。ちなみに、家畜飼養業者が獣医師に抗生剤希望を出してたのか、抗生剤が不要であると判断したにもかかわらず処方希望を出したのか、処方どおりに使わずに抗生剤を保管しているのかといった、ヒトに見られる行動まで言及したものはありませんでした。

 

薬局お茶の水ファーマシーでは、患者さん(ヒト)がメインですが、今回は、動物全般にも視野を広げてお話しました。医師から処方された抗生剤は処方された分をしっかり飲みきって、耐性菌発現を少しでも発生させないように取り組みましょう。飲み方がわからない、飲み忘れしまったと言った場合の対応方法はお薬の内容によって対応が違いますので、ぜひかかりつけの薬剤師までご相談くださいませ。もちろん、薬局お茶の水ファーマシーでもオンライン相談を受け付けていますので、そちらでもお気軽にご利用くださいませ。

 


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