【前編】第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会での当薬局の発表が薬局・薬剤師のためのニュースメディア「PHARMACY NEWSBREAK」に掲載されました。

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※長くなりそうなので、今回は前編、中編、後編に分けて第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会の所感を書いていきます。

第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会での当薬局の発表が薬局・薬剤師のためのニュースメディア「PHARMACY NEWSBREAK」に掲載されました。 → http://pnb.jiho.jp/tabid/68/pdid/24542/Default.aspx

演題は「法人に対する零売の実際」で、処方箋以外の医療用医薬品の薬剤師対面販売を法人社員に対して行った実際をお話しました。当薬局が零売を始めるに至った経緯と、実際に始めてみて変化した医療の構造についても、お話させていただき、医療費削減だけではない、医師の過重労働に対して効果があるのではないかということで取り上げていただきました。

零売そのものについて学会発表したことが取り上げられましたが、ここでは、その背景と実際のところを補完していきたいと思います。

第3回デジタルヘルス学会学術大会の薬局分科会のテーマは「デジタル領域において【薬剤師】が提供できることの実際を深堀りする」ことを念頭に準備させていただきました。ちょうどソーシャルアクション分科会では、産婦人科医の柴田綾子先生がアフターピルについて講演されることが決まっていました。そこに、今年の夏に薬剤師によるアフターピルの対面販売のオンライン署名活動をされている薬剤師の高橋秀和先生をお招きすると、医師の目線だけではなく、薬剤師の目線も入った上でディスカッションができ、アフターピルの周辺事情を深く考えられる機会にできると思い至り、高橋秀和先生に講演を依頼しました。

アフターピルを薬剤師が対面販売するには、アフターピルの分類を「処方箋医薬品」から「処方箋以外の医療用医薬品」に変更することが求められ、実現すれば、その提供方法は薬剤師が対面で販売することが原則となります。この販売方法は当薬局で行っている零売と同じであり、零売の周辺事情の説明に、茨城県で保険調剤を行いながら零売のサブスクリプションモデルの試験運用を行われている薬局・なくすりーなの吉田聡先生にご講演いただきました。薬局長は実際の意見や使用感、零売後の周辺医療環境の変化について、吉田聡先生は零売の法律的なお話とサブスクリプションについての説明をメインに行なっていただきました。

薬局分科会の最初の講演は薬局長が務めさせていただきました。薬局お茶の水ファーマシーの近隣医療機関は2年前、マスメディアの隠れインフルエンザ報道によって、患者さんが押し寄せて診療所のパフォーマンスを著しく落とすことを危惧され、一般内科を取り下げてまで、専門病院化されました。医師の過重労働が叫ばれている中、その病院はいち早く専門病院化による医師の働き方改革を遂行されました。しかし、今まで町医者として一般的な風邪や花粉症で来院していた患者さんにとっては、医療を受けられないということでとても困ってしまい、薬局窓口でもご相談される方が相当数いらっしゃいました。医師も患者さんも困ってしまっている現状に、当薬局は零売という手段で薬剤師としての医療提供ができるのではと考え、医療機関と連携し、地域の患者さんに周知することにしました。その結果、薬局でも風邪や花粉症の症状緩和の相談ができること、医師の専門病院化への理解、医師と薬剤師の役割分担がいい感じに機能してきました。流れを図式してみました。

このようにして、薬剤師の提供サービスとして零売を実装することで、地域医療の役割分担が新しい形で発展する兆しが見えてきました。当薬局としては、御茶ノ水、神保町のオフィス街に位置しているので、ビジネスパーソン向けのサービスを薬剤師として提供し、医療相談の機会を増やすことで地域医療に貢献できればと思い、法人零売に取り組みました。法人零売とは、会社の社員に薬剤師が総合的なお薬相談を無料で受け付け、薬剤師が必要と判断した場合において、零売を実施することを指します。当薬局では、零売の料金は薬剤服薬歴管理手数料と薬剤費を別々で頂いていますが、これは法人零売の対応に即して設定しています。というのも、零売対応すべてを法人負担とした場合、社員への給与所得とみなされることがあるため、定額の管理手数料は法人負担、薬剤費は社員の自己負担という形で処理しています。また、薬剤費を社員負担にすることで、薬剤の買いすぎ、薬物乱用を防ぐ意味合いもあります。サブスクリプションに薬剤費もしてしまうと、元をとりたいという心理がはたらき、過剰医療が起きやすくなってしまうと想定もしました。

実際に法人零売を実施したところ、風邪や花粉症といった軽症疾患の対症療法に理解が進み、早めに対策がとれる安心感をご好評いただいています。しかし、零売自体の体験者が少ないため、どのように薬剤師に相談してよいかわからないという社員の意見もありました。

アマゾンや楽天、大手調剤薬局が参入したらひとたまりがないのでは?というご質問をいただきました。零売自体に医療のシュリンク(*注 医療のシュリンク≒売上減)が発生してしまい、大手が参入しにくいため、法律が変わらなければ、小規模薬局が地道にサービスとして提供しつづけられるものであると回答しました。なぜ医療のシュリンクが生じてしまうかと言うと、零売は周辺医療機関の風邪診療や花粉症診療と提供するお薬が同一であるケースも普通にあるので、医療機関の受診抑制から人件費削減に動かざるを得ないからです。風邪や花粉症での処方箋を応需して医療機関と薬局が利益を得ている現状の利益構造を大きく変えてしまうことで、大手が参入すると医療供給者が少なくなることも想定されるため、無理やり参入することは現状は考えづらいです。

薬剤師が零売を行うメリットはどこにあるのかというご質問もありました。大衆薬には、複数成分を一つにまとめた商品が人気であることが多いですが、薬剤師としては単剤を組み合わせることでなるべく薬を少なく扱えるようにしたいという思いがあります。ただ、メーカーが単剤の大衆薬の販売を取りやめたり、そもそも供給されている種類も少ないため、薬剤師にとっても、患者さんにとっても対症療法に単剤を用いることは現実問題では少しハードルがあると考えられます。しかし、零売では、処方箋以外の医療用医薬品を単剤で扱うことができる(すでに在庫できている)ため、患者さんの症状緩和に適した薬を選択しやすいです。経営的にも、大衆薬の複数種類の在庫リスクを抑えられるメリットがあります。また、飲んでいる薬が医師も薬剤師も単剤だと把握しやすい(大衆薬だと何が入っているか一瞬ではわからないことがある)こともメリットです。デメリットは、濫用も適正使用も薬剤師の窓口対応が要であるため、薬剤師の倫理感が欠如すると、社会的な問題を引き起こしかねないことです。

どうやって零売を管理しているのかという質問もありました。多くの調剤薬局には、電子薬歴が導入されています。零売は内部処理的には自費扱いで入力をしているので、薬局の通常業務とほとんど同じ流れで零売を管理することができます。ただし、金額設定に関しては、現状別途設定できないため、ある程度手動で計算しないと対応できません。電子薬歴(レセコン)の会社が零売対応できるようになるには色々時間がかかりそうなので、今のところは自分で体制を作るしかないです。

中編はこちら → 【中編】第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会での当薬局の発表が薬局・薬剤師のためのニュースメディア「PHARMACY NEWSBREAK」に掲載されました。

 


<Pharmacy Tips !>
#ハチミツも処方されることがある
ハチミツは実は医薬品として登録されています。咳止めとして処方されたり、お子様のシロップの矯味剤として使われています。去痰、抗炎症にも効果があるので、喉の調子が悪いときに、家のハチミツを使ってみましょう(一歳未満のお子様には使わないでください)。