【中編】第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会での当薬局の発表が薬局・薬剤師のためのニュースメディア「PHARMACY NEWSBREAK」に掲載されました。

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前編はこちら → 【前編】第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会での当薬局の発表が薬局・薬剤師のためのニュースメディア「PHARMACY NEWSBREAK」に掲載されました。

年を越してしまいましたが、去年の12月22日(日)に開催された第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会について、会場でどのようなお話があったのかをまとめていこうかと思います。

零売の個人に対するサブスクリプションサービスを先んじて実施されている、茨城県の薬局・なくすりーなの薬剤師 吉田聡先生が続いて登壇されました。

薬剤師 吉田 聡先生のプロフィール → https://lle-lien.com/whats-satoshi

薬局・なくすりーなのHP → https://lle-lien.com/

吉田聡先生は、「携帯型医療用医薬品救急箱【ラクスリード】」という、処方箋以外の医療用医薬品を携帯できる形で詰め合わせた救急箱について発表されました。薬剤師のカウンセリングによって、その人に必要と思われる医療用医薬品を3種類を選び、6回分ずつ詰め合わせているという形をとっています。月額1,100円で、使った分は薬局に来局して補充するそうです。必要最低限の医療用医薬品の販売に薬剤師が介入することで、薬物乱用を未然に防ぐ仕組みを作られています。モニターの方からは、「普段病気をしないから要らないと思ったが、急に足が痛みだした時にすぐ使える薬があってよかった。その後病院で痛風とわかり、治療している」「喉が痛くて、このままだったら風邪を引くと思ったときに使った。悪化せずに持ちこたえられた。忙しくて病院にかかれない時期だったから助かった」「なにかあったときに、薬剤師に相談できること、すぐに使える薬があるという安心感がすごい」といった声があるそうです。

吉田先生は零売の効果として、医療費の削減効果だけではなく、医師の過剰労働の削減策にも有効だと指摘されており、過労死ラインの2倍を超える医師の年間残業上限1,860時間を抑制するために、零売による薬剤師の一次対応(病気ではないときの健康相談として0次対応も)が現状の医療を保つ手段となりえると考えられます。ラクスリードは、①患者さんにとっては安価で安心できる薬と医療のことを相談できる相手が手に入る、②医師にとっては、過剰労働の負担を減らしてくれる、③国にとっては医療費削減ができることが挙げられ、三方良しのサービスで、これからの発展が望まれます。

ここで、吉田先生は零売を取り巻く法律と現状についての知見を発表されました(令和元年12月現在)。というのも、零売自体が薬剤師にとっても、他の医療従事者にとっても、患者さんにとっても馴染みのあるものではないため、あらためて法律的な根拠と現状を整理してお話する必要があるからです。

零売における厚生労働省の通達は唯一「薬食発0318 第4号通知」のみです。この通達において、零売は「やむを得ず」販売を行わざるを得ない場合において薬剤師が対面販売をすることに言及していますが、「やむを得ず」ということは具体的にどういうことを想定しているのか?ということがよくわかっていません。吉田先生が調査した結果、零売における「やむを得ず」は「ほかの代替手段がない場合」としており、例えば、山間部で更に医師が学会などで不在といった、医師が介在できない場合を行政は想定しているとのことでした。これはかなり限定的で、非現実的な想定でもあると考えられます。また、吉田先生は「必要最小限の数量」に限って販売しなければならないとする規定にも言及され、「必要最小限の数量」とは、明文化されたものはなく、一般用医薬品の「要指導医薬品」の場合だと「1人1包装単位まで」とする記載があるため、零売はこれより厳しく見積もれば良いというニュアンスの回答を得ていることを明らかにされました。しかし、行政の条件では、零売は非現実的な条件による実施しかできないため、簡単にできることではないと思われますが、法律上禁止されていないため、零売していても行政処分することはできない、法律的にグレーゾーンではないことを強調されました。ただし、弁護士の見解によると、零売が今後、何らかのトラブルによって社会問題が起きたときはこの限りではないとしています。

零売による副作用救済に関しても、医薬品医療機器総合機構に確認したところ、医師の処方箋に基づく医療用医薬品と同様に救済対象であることも確認されています。ただし、処方箋なしで販売したときのトラブル、薬剤師の過失によって生じた副作用は薬剤師が責任を負うこととしています。

吉田先生は最後に、ラクスリードと零売の現状の課題について、近隣医療機関の医師とのすり合わせが重要になってくることを強調されました。一般用医薬品の販売であっても、近隣医療機関の医師とのすり合わせはセンシティブな面が多く、ラクスリードのテストより先に進みにくい現状があるそうです。経営と医療が絡み合った、非常にセンシティブな話であるため、お互いの専門性を活かし合えるような関係性ですり合わせしていくことが望ましいようです。薬局お茶の水ファーマシーの近隣医療機関は循環器専門のため、他の科に属する初期症状の対症療法に、薬剤師が介入しやすいですが、複数科目を標榜されている近隣医療機関では、零売を推進する経営側のメリットが薄いのかもしれません。現状の保険制度では、クリニックモール+薬局が経営の最適解のようになっていますが、徐々に保険制度が変化してきているため、今後の展開によっては、保険調剤と零売を組み合わせた薬局もスタンダードに存在できると思われます。

吉田先生との質疑応答について、薬剤師会の副会長をされているが、零売をやることに対して薬剤師会内で気をつけていることはないかという質問がありました。吉田先生は茨城県古河市薬剤師会の副会長をされていますが、少なくとも古河市薬剤師会内では禁止するような空気ではなく、そこには触れてこないと回答されていました。薬剤師会によっては、加入時に零売を実施するかどうかの確認事項を設けているところもあるようです(※薬局お茶の水ファーマシー補足)。

吉田先生のこの回答は薬局長的に意外でした。全世代型社会保障検討会議において、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は、市販類似薬の保険適応除外に連名で強い懸念を示しており、地域の薬剤師会とスタンスが違うためです。零売が地域の医療提供の手段として、これからも育てていける余地があると感じられた回答でした。

(後編に続きます) → 【後編】第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会での当薬局の発表が薬局・薬剤師のためのニュースメディア「PHARMACY NEWSBREAK」に掲載されました。

 


<Pharmacy Tips !>
#ココナッツオイルは健康食品ではないかもしれない
メタアナリシスの結果、ココナッツオイルの摂取は、サラダ油(nontropical vegetable oils)と比べて、LDLコレステロールの上昇(10.47 mg/dL 95%CI 3.01 17.94 I2=84% N=16)、HDLコレステロールの上昇(4.00 mg/dL 95%CI 2.26, 5.73 I2=72% N=16)と有意に関係していました。血糖、炎症とは関係は認めませんでした。
Circulation. 2020 Jan 13. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.119.043052