【後編】第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会での当薬局の発表が薬局・薬剤師のためのニュースメディア「PHARMACY NEWSBREAK」に掲載されました。

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【前編】第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会での当薬局の発表が薬局・薬剤師のためのニュースメディア「PHARMACY NEWSBREAK」に掲載されました。

【中編】第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会での当薬局の発表が薬局・薬剤師のためのニュースメディア「PHARMACY NEWSBREAK」に掲載されました。

後編は第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会で最後に登壇された兵庫県のあおば調剤薬局薬剤師の高橋秀和先生の内容についてです。

高橋秀和先生が寄稿しているBLOGOS → https://blogos.com/blogger/takahashi_hidekazu/article/

高橋先生は去年の夏に、「Change.org」というオンライン署名サイトを使って、「緊急避妊薬(アフターピル)の分類を『処方箋医薬品以外の医薬品』に変更し、薬剤師が提供できるようにしてください」というテーマで活動されています。現在、日本において、アフターピルは処方箋もしくは病院の院内調剤によってでしか入手できません。一方で、海外では身近な薬局でも入手することができ、女性がアフターピルにアクセスする権利が確保されています。詳細については、実際にChange.orgか、上記のリンクから参照してください。

デジタルヘルス学会学術大会の薬局分科会で高橋先生をお招きしたのは、オンライン上で薬剤師が処方箋以外の医療用医薬品に分類変更するアクションについて、アフターピルを含めて広く認知、思考できる機会を分科会で作りたかったからです。また、薬局分科会の次のセクションはソーシャルアクション分科会でして、そこでは、登壇者全員が産婦人科医で、アフターピルの話、医師の働き方改革といった内容が控えており、薬局分科会が密接にリンクしています。薬局分科会がアフターピルの話を取り扱うことで、次のソーシャルアクション分科会の議論に複層的な視点、思考がもたらされるとして、高橋先生に登壇を依頼し、快諾いただきました。

ただ、処方箋以外の医療用医薬品がどのように扱うことができるのかを薬剤師、医師、看護師といった医療従事者でも認知されていないと考えられたため、薬局お茶の水ファーマシーの片山と薬局・なくすりーなの吉田聡先生が処方箋以外の医療用医薬品の実際の取り扱い、現状について発表した上で、高橋先生の講演という形にセッティングしました。

アフターピルを求める声の背景として、

・世界76カ国では薬局でも購入可

・1,000~5,000円、医師の処方箋ではさらに安価で提供される、未成年は無料であることもある

・日本では医師への受診が必要で、先発品であれば1~3万円費用がかかること

・「性と生殖の権利」≠「保守的性教育・パターナリズム」(保守とリベラルにおける考え方)

・フェミニズム(性に基づく差別・搾取・抑圧をなくす運動)

・医療用から要指導・一般用医薬品への転用に関する検討会議

・OTC化を求めるネット署名活動 → アフターピル(緊急避妊薬)を必要とするすべての女性に届けたい!

などがあげられます。高橋先生はこのうち、保守とリベラルについてアフターピルに関する根本的な考え方の差異があることを指摘されました。保守的な考え方はときに権威主義が混入しがちであり、自律してこその性交渉、医師の指示、指導に従う、妊娠中絶はかけがえのない命を奪う行為であること、女性、子供、患者は正しい道に導いてあげないとならないといったことがベースにあります。リベラル的な考え方はそもそもの定義や理解が曖昧になりがちであることを踏まえながら、誰もが、自らが望む性生活を送る権利を有すること、正しい知識を得て、自分が望む性生活を送れること、望まぬ妊娠でも中絶すべきでないとすれば、女性の権利は守れないといったことがベースにあります。両者をフラットに、複層的に見ようとすることが医療従事者にとってハードルになっているのではと感じさせる内容でもありました。実情と両者の考え方によるアフターピルの零売実現は、アフターピルだけではなく、そもそもの社会的な思想の差異の理解から始まるのかもしれません。

国際人口開発会議では、「人々は、他の人の権利を尊重しつつ、安全で満足できる性生活を贈り、子供を産むかどうか、産むとすればいつ、何人産むかを決定する自由を持つ。適切な情報とサービスを受ける権利を有する」としており、世界保健機関では、「意図しない妊娠のリスクをかかえたすべての女性、および少女には、緊急避妊にアクセスする権利があり、緊急避妊の複数の手段は、国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含まれなければならない」としています。しかし、この権利と自由のテーマは日本人にとっては苦手な分野で、複層的な議論と思考を深めることが進みづらくなっているのでは、と高橋先生は指摘されていました。

アフターピルにアクセスするにも、そもそも適切な情報と教育による学習機会の提供がさらに必要であり、中学・高校教育だけではなく、卒業後にも学習できる機会を提供することも大切です。性教育は学校での教育のほか、卒業後に学習する機会は確かに日本では少ないように感じます。適切な情報にアクセスできるように、薬局にも相談できる関係性を育んでいくこともこれからの薬局に求められることだと感じました。

高橋先生は現状の行き詰まりは予想できたものでは、と指摘しつつ、保守・権威主義に変わる価値観は、医療側・制度設計側が自ら提示すべきではなかったのかとお話されました。高橋先生のオンライン署名活動の提出先は、日本薬剤師会と厚生労働省、自由民主党厚生労働部会の3つですが、会場からは、なぜ日本医師会への署名提出はされていないのかという質問があり、それに対して、日本医師会は政策決定者側ではないためと回答されました。また、なぜ一般用医薬品ではなく、薬局で販売(零売)できるように署名活動をされているのかという質問に対して、日本の制度設計上、急に門戸を広げるような設計をしないため、であれば薬剤師の対面販売を選んだとのことでした(制度設計の構造的な問題)。本来は海外と同様に、ドラッグストアで販売すべきとしています。これは、次のソーシャルアクション分科会でも登壇者の産婦人科医の先生全員が同意していらっしゃったので、アフターピルOTC化が最終到達点でしょう。零売はあくまでもその経過点に過ぎなく、関係性構築にも活用できるため、その可能性について、薬剤師が提供できる価値についての考えの種が大いにあった講演でした。

薬局分科会、ソーシャルアクション分科会の繋がりで、医療従事者側の視点は確保できたのですが、アフターピルに関しては社会医学、社会薬学といった切り口でもテーマを補完する必要があったと感じています。アフターピルへのアクセスに困っている方を生み出している原因は社会が生み出したことであることを認知するには、社会学者の方のフォローもあるとよりベターだったでしょう。しかし、薬局分科会で薬剤師が調剤から社会的な医療提供者として何を価値提供できるのかを改めて考えられる内容であったことは、デジタルヘルス学会学術大会の、従来の枠にとらわれない自由な雰囲気があったから実現できたのかもしれません。

第3回デジタルヘルス学会学術大会薬局分科会の内容は以上となります。次回の第4回デジタルヘルス学会学術大会は「Hackable Healthcare ~医療をハックせよ~」というテーマで、薬局分科会もテクノロジーを駆使した薬局ハックの現状とこれからの未来像を語り、学びの場を提供できるように予定されています。2019年12月20日(日)はぜひ、デジタルヘルス学会学術大会の薬局分科会にいらしてください。

 

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