口の中で溶けて服用しやすい口腔内崩壊錠(フィルム)には色んなタイプがあります。

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薬局や病院でお薬をもらったとき、口の中で溶けるタイプのお薬です、と説明を受けたことがある方は結構な割合でいらっしゃると思います。「口の中で溶けるのか、溶けないのか」は普通に水で医薬品を服用できる人にはあまり問題視されませんが、錠剤を飲み込むことが困難な方向けに、口の中で溶けて、水なしで服用できるタイプの錠剤があります。このタイプのお薬は「口腔内崩壊錠(Orally disintegrating tablet=OD錠)」と呼ばれ、例えば、アムロジンOD錠5mgといったような形で、お薬の名前にOD錠であることがわかるようになっています。溶けないタイプでも、溶けるタイプでも薬の効き目は変わりませんが、治療で使われる方の状態に合わせてお薬の形(=剤形)を変えて処方されます。

薬局の窓口でも、薬の飲み方でOD錠に変えたほうが良い場合は薬剤師の判断で剤形を変更することが一定の範囲内でできます。もちろん、処方医に確認して、OD錠に変更することもできますが、よっぽどのことがない限り、窓口で変更ができます。よっぽどのことというのは、OD錠が先発品しかない場合において、溶けないタイプで一般名処方されている場合です。ナウゼリンOD錠への変更希望がこれに該当します。

ここまでは現場でありがちなお話ですが、今回はOD錠にもいろいろなタイプがあるということで、割と知られていない口腔内崩壊錠の世界をお話したいと思います。

口腔内崩壊錠自体の歴史は結構最近で、世界では1980年台から登場しており、日本では2000年に登場したガスターD錠が登場から徐々に、他の医薬品でも口腔内崩壊錠の開発が加速しました。現場では、錠剤タイプの服用が困難な場合において、砕いて服用するか、注射剤タイプが使われていましたが、口腔内崩壊錠の登場により、飲みやすさが向上し、服薬遵守(コンプライアンス)を高めることができました。発売当初は飲み方が従来と異なるということで混乱を招いたり、口腔内崩壊錠が脆いことで一包化に適さないといった問題点があったようです。舌下錠(舌の下に錠剤を溶かして血管に吸収させるタイプの薬)ではなく、口の中ではほとんど吸収されないので、飲み込まないと効果が期待できません。

このような口腔内崩壊錠は、技術的には6種類くらいに分類できます。1種類の医薬品に6種類の口腔内崩壊錠が存在しているのではなく、医薬品の性質に合わせて、異なる製剤技術が使われているという感じです。

①鋳型錠製剤

マクサルトRPD錠やクラリチンレディタブのような、かなり溶けるのが早いタイプのお薬です。強度が弱く、吸湿性も高いので、包装から取り出したらすぐに服用します。早く効かせたい場合の医薬品がこの製剤方法で作られていることが多いです。PTPシートに充填して、凍結乾燥して製剤されています。

②湿性錠製剤

アリセプトD錠やブロチゾラムM「EMEC」のような、僅かな唾液でも速やかに溶けるタイプのお薬です。こちらも柔らかく、機械を使った一包化には向いていないことが多いです。湿性と書かれているので、物自体がすでに湿っているかのようなイメージをもつかもしれませんが、作るときに水溶性の添加剤を混ぜ込み、乾燥させることで、多孔質(多くの穴)をふくませ、水が入り込みやすくなるため、すぐに溶けるという製剤です。なんだかメレンゲに似ていますね。

③易成形性添加剤使用製剤

タケプロンOD錠が代表例です。タケプロンOD錠はOD錠の中でも、錠剤内に分散している腸溶性細粒(小さなカプセル)の中にランソプラゾールというお薬の本体が入っているという、複雑な形をしたお薬です。ランソプラゾール自体が、胃酸のような強酸環境下で効果を失ってしまうため、腸溶性(胃をスルーして腸で吸収されるようにすること)を持たせることが必要です。似たようなお薬ではオメプラールというお薬がありますが、こちらはOD錠はありませんが、ランソプラゾールはOD錠があるので服用しやすいです。お薬の中に小さなカプセルを入れて、飲みやすくする工夫がされた医薬品がタケプロンOD錠です。余談ですが、オメプラゾール腸溶錠を割ってくださいという処方だと処方医に確認して、ランソプラゾールを提案することはあります。ランソプラゾールは一応割れます。オメプラゾール腸溶錠は割ってしまうと、胃酸によって効果が消失してしまうので注意が必要です。

④崩壊機構工夫製剤

アムロジンOD錠の他、エバステルOD錠、アレロックOD錠など、比較的多くの製剤に使われているようです。一般的な製剤設備でも製材することができます。医薬品の成分自体の工夫ではないので、医薬品の苦味を感じやすいです。例えば、アレロックOD錠の味が苦手なので溶けないタイプにしてください、という方も一定数いらっしゃいます。

⑤多孔質成形体製剤

ガスターD錠、タリオンOD錠、ディオバンOD錠といった薬が該当します。湿性錠製剤はアルコール水溶液などで湿潤して製剤されていますが、多孔質成形体製剤は賦形剤(錠剤をかたちづくる素材)において、薬の脆さを補いつつ、崩壊性に優れている糖類を組み合わせて、加湿・加熱・焼結処理をすることで作られています。現場での一包化ニーズに耐えられる薬の硬さを保ちつつ、患者さんが服用しやすいタイプで大変喜ばしい剤形です。有核錠剤構造製剤の例はタケルダ配合錠です。タケプロンODがアスピリン腸溶錠を包むようにして製剤されています。

⑥フィルム製剤

ボグリボースODフィルムやロラタジンODフィルムといった、水なしで極めて早く溶けるタイプのお薬です。薬の混合液をロールで引き延ばし、薄い膜にして乾燥することで形成された製剤です。携帯性が良いため、服用しやすいことが利点です。バイアグラにもODフィルムがあったりします。バイアグラをかばんなどに入れて持ち歩いていることが多いため、携帯性を向上させるために技術が使われたそうです。

上記のように、口腔内崩壊錠にも様々な種類があり、患者さんの飲み方によっては、効果を引き出せないこともあります。薬の服用方法についても薬局でご相談に乗れますので、お気軽に薬剤師までどうぞ。


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